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ワンナイト・ラバー
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「ちぇっ、ロバートの奴め!」
 ブーツを穿いたままセミダブルの柔らかなベッドに体を投げ出したおれは、枕に顔を埋めて悪態をついた。
 ロバートは客室で寝ろと言ったが、嫌がらせで奴の寝室を使ってやる。
 唸り声を上げて仰向けになると、顔にかぶさる長い髪を手で乱暴にはねのけた。
「くそう!」
 苛々するのは欲求不満だからだ。数ヶ月のヨーロッパツアーを追え、他のバンドメンバーが久しぶりのロンドンの夜を存分に楽しんでいるのが目に浮かぶだけに、なぜ俺だけが、という気持ちが強くなる。
『リック、おまえは外出禁止だ』
 マネージャーのロバートは俺の鼻先に指をつきつけると、冷たい声で言い放った。
『そりゃねえだろ、バーティ!』
 俺は必死で食い下がったが、奴は耳を貸さなかった。
 高い天井を見上げ、ふう、とため息をつく。
 家の中はしんと静まりかえって、物音一つしない。
 薄情なメンバーは遊びに繰り出してしまったし、小言を繰り返していたロバートも、どこかから電話がかかってくると慌てた様子で出かけてしまった。このだだっ広い屋敷の中は俺一人というわけだ。
 別に部屋に鍵がかけられているわけでもないし、ガレージには車もあるはずだ。普段ならマネージャーの言いつけなどおとなしく守るような俺じゃないんだが、さすがに今回は罪の意識があるせいか、脱走しようという気にはなれない。
 ツアー最終地であるローマでのコンサートの後、おれはホテルまでついてきたグルーピーの中から適当なのを引っかけて部屋に連れこんだ。ロバートがうるさく言うのはわかっていたが、節操がないのは俺の下半身であって、俺自身じゃない。のぼせ上がったファンの扱い方も心得ているつもりだった。
 ところがこれが性質の悪い女で、油断して寝こけていた俺はみっともない姿を写真に撮られた上、荷物まで盗まれちまった。二流紙に写真は掲載されるわ、貴重品は少なかったとはいえ、バンド内のプライベートなことも書かれたメモなんかをやられちまったもんだから、被害は俺自身にとどまらなかったんだ。
『だから、ベッドの相手が欲しければ安全なのを手配してやるといつも言ってるだろう』
『おまえの趣味は悪いんだもんよ……』
『そんな口がきける立場か!』
 そういうわけで、俺はロバートの親の持ち物だという郊外の別荘で、おとなしく軟禁の憂き目にあっているのだった。
「あーあ」
 何度目かわからないため息をつく。
 何もかもにも腹が立つ。
 熱っぽい目をして俺の裏をかきやがったあの女にも、小うるさいロバートにも、自業自得と笑っていたメンバー達にも。
 ツアー自体はまずまずの成功を収めていただけに、最後でしくじったことが悔しくてならない。
 俺がベースを担当しているバンド《ヘレネー》はイギリス国内でもそこそこ名は売れているが、どちらかというと大陸側での人気の方が高い。生粋のロンドン子であるボーカルのアーティを覗き、他のメンバーが国外出身者であることも大きな理由だろう。ヘレネーは多国籍バンドなのだ。
 ちなみに俺はドイツとスペインの血を引いている。綺麗にウェイブのかかったブロンドのバージンヘアは親譲りなのだ。典型的なアングロサクソンである母親はもちろん、スペイン北部出身者の父親も金髪碧眼だった。
 よりどりみどりのメンバーの容姿を見ていれば、音楽性がどうこうよりも多分に見た目重視でロバートが俺たちを集めたことは一目瞭然だが、ルックスオンリーと陰口を叩かれるなか、なにくそと思ってここまでやってきた。
 遠慮がない分衝突も多いが、メンバーはもはや俺にとって家族も同然で、ヘレネーは大事なバンドだ。つまんないスキャンダルでつぶれるとは思っていないが――というか、そこまで話題にされるほど注目されていないのだが――ケチがついたことは何とも面白くなかった。
 不意に、外で車の音が聞こえたような気がして、俺はベッドカバーの上で体を起こした。
 ロバートか? それともメンバーの奴らが気を変えて戻ってきたのか?
 しばらく耳を済ませていたが、階下は相変わらず静まりかえっているようで、俺は気のせいだと思うことにした。
「ちぇっ、酒でも飲むか」
 よいせ、と勢いをつけて起き上がり、部屋の入口脇に置かれた小さな冷蔵庫に近づく。ロバートの寝室を拝借したのは、どこへ行ったかは知らないが深夜に戻ってくるだろう奴のベッドを占領しておいてやろうという幼稚な嫌がらせの意図もあったが、この冷蔵庫が目的でもある。
 俺は冷蔵庫から冷えたビールをいくつか取り出すと、立ったまま、二本ほど一気に飲み干した。
 そのときだった。
 トントン、とドアを控えめにノックする音がする。
「誰だ? ニコ? アーティ?」
 ロバートなら自分の寝室に入るのにノックなどしないだろうし、他のメンバーも似たり寄ったりのはずなのだが。
 返事がないのでドアを睨みつけたままビールを飲み続けていると、もう一度ノックが響いた。
「入れよ」
 苛々と声を上げると、わずかな沈黙の後にゆっくりとドアが開く。ためらいがちに顔を覗かせたのは、見たこともない男だった。いや、男の子、だろうか?
 ドアのすぐ近くに立っていた俺を見て、こちらと同じくらい驚いた様子の相手は、どう見ても十五、六歳くらいに見えた。しかも、東洋人だ。
「ナニモンだ、おまえ」
 ビールの小瓶を片手に問いかけると、相手はわずかに首を傾けた。
「会ったことないヤツだよな。何してんだよ、ここで」
 もう一度尋ねたが、困ったような顔をするばかり。
 不審に思った俺が、おい、と手を伸ばすと、びくりと肩を震わせて、「あの、も、もっとユックリ……」と、小さな唇が開いた。
 何だ、言葉がわからないのか。
「誰だ、って言ったの」
 俺が一語一語区切るように言ってやると、ああ、と合点のいった顔で「ヒロキです」と答えた。
「イロキー?」
「あの、ヒロ、です」
 名前を知りたいわけじゃないんだが。
 俺がかすかにため息をつくと、ヒロ、と名乗った青年は寝室の中をキョロキョロと見まわしてから、俺の顔を見上げた。俺は190近くあるが、彼はそれよりニ十センチほど低いだろう。おまけにずいぶん痩せている。首なんか折れそうなくらい細い。
 チャイニーズかな、フィリピーノかな。着てるものが結構高価そうだから、ジャパニーズかもしれない。俺はたてつづけにあおったビールで熱くなった頭で、ぼんやりと彼を見下ろしながら考えた。
 真っ黒な髪に縁取られた小さな顔は、幼さの残る、おとなしい、やさしい作りをしている。これだけあからさまに胸がぺったんこでなければ、女の子かと思うくらいだ。
「あの」
 黙って突っ立ったままの俺の機嫌を伺うように、彼は上目遣いでこちらを見上げていた。
「あなた、ロバートのトモダチ?」
「は?」
 俺がぽかんと口を開けると、ロバーツフレンド? ともう一度繰り返す。
「トモダチ……まあ、友達っちゃ友達かな。えっと、そうだよ。イエス。」
 なんなんだ? この会話は。
 それでも俺の肯定に、彼は明らかにほっとしたようだった。乾いた下唇を舐め、おずおずと微笑む。思わずそのピンク色の舌の動きに目を奪われていると、ヒロは安心したように打ち明けた。
「ロバートに言われて……ここにクルようにって」
 へ? ロバートに言われて来た?
 その言葉の意味を理解すると同時に、パンパーン、と俺の頭の中でクラッカーが鳴り響いた。
 なんだ!
「気がきくじゃん、ロバートのヤツ」
「え? ナニ?」
「そっか、ロバートがよこしたのか」
 先ほどまでの鬱々とした気持ちがどこかに吹っ飛んでいく。俺はだらしないほど口元を緩ませると、残っていたビールを一気にあおって、空瓶を後ろへ放り投げた。
「そういうことなら、そんなとこに突っ立ってないで、こっち来いよ」
 俺は手を伸ばし、ぐい、と彼の腕を引いた。
「な、ナニ?」
 あっけなく引き寄せられた体をいったんぎゅっと抱きしめてから、ベッドに座らせてやる。ん、見た目ほど骨ばっていない。いい抱き心地だ。
「ビール飲む?」
 上機嫌で冷蔵庫をもう一度開ける。ヒロは、ビール、の単語にちょっと首を傾げてからかぶりを振った。
 俺は新しいのをもう一本取り出すと、蓋をねじ開けた。
「しかし、ロバートが男をよこすとは珍しいな」
 しかもこんな素人っぽい子。
 ロバートが斡旋してくるのはいつも何もかもわきまえたようなタイプ、それもメロンのような乳や蜜蜂のような腰をした女ばかりで、俺も男だから嫌いではないけれど、そればかりでは胸焼けがする。
「しかし、奴さん、俺のことロリコンだと思ってんのかな」
 ベッドに座ったまま落ち着かない様子でこちらを見上げている子猫ちゃんを観賞しながら、呟く。どう見ても未成年だが、東洋人は若く見えるというから、実は見かけより年上なのかもしれない。マネージャーが危ない年齢のをよこすはずがないし。
 どちらにしろ、俺の中でロバートの株はぐんと上がった。一人寝の寂しい夜を気遣って、こんな上物を届けてくれるなんて、いいとこあるじゃんか!
 フロアランプに産毛の光るつるりとした頬も、コットンパンツに包まれた細い腰も、今まで味わったことのない禁断の果実のようで、こちらの食指を十分にそそってくる。なんたって東洋人というのは初めてなのだ。
 演技なのかもしれないが、物慣れない様子も結構いいセンいっている。男と寝るのは久しぶりだし、俺は早くも体の中心が熱く疼いてきた。
「ビール、本当にいらない?」
 俺がもう一度尋ねると、彼は少しためらった後に、今度はうなずいた。
 こちらが近づくのを見て、瓶を受け取るように差し出された手首を掴む。そのまま肩を抱き寄せると、驚いたように開かれた口の中へ、生暖かくなったビールを口移しで流し込んでやった。
「げっ、げふっ」
 途端に咽る背中をなだめながら、片手でベッドカバーを引き剥がし、そのまま細い体を押し倒す。しばらく枕の上で咳き込んでいたヒロは、俺がブーツを蹴り脱いでその上にのしかかると、驚いたように上半身を起こそうとした。もちろんガッチリ押さえてそんなことは許さない。
「ナニ? 待って! ナニ?」
 たどたどしい発音でホワットとウェイトを繰り返す唇をふさぎにかかる。ビールの味がするんだろうが、お互いなのでよくわからない。
 逃げ惑う舌を追いかけ、絡ませると、小さな悲鳴みたいな声が漏れ、彼の顔の周囲にカーテンのように垂れた俺の髪がぎゅっと掴まれた。
「こらこら」
 おいたを咎めるに少々力をこめて下唇を噛んでやると、密着した下半身がびくっと跳ねる。
 楽しい。これは楽しい。
 おとなしそうに見えて、結構やんちゃじゃないの。
 唇を解放してやらないまま、両手で彼のシャツのボタンを順番に外していく。引っ張られた髪は痛いが、我慢しておく。
 滑らかな首筋から剥き出しになった胸へと手のひらを滑らすと、指の先に小さな突起が引っかかった。気づかないで通りすぎてしまうほどの膨らみだ。すかさず指の腹で押さえ、目的のものであることを確かめてから、強く擦ってやる。
「ムーーーッ」
 くぐもった声が聞こえ、再び髪が強く引っ張られた。
「いってえ!」
 さすがに顔を離すと、
「○×※△××!」
 俺の唾液でたっぷりと濡れた唇が、何事かをわめいた。そして俺の肩を押しのけようとする。
「何言ってんだか、わかんねぇよ」
 何を叫ばれようと痛くもかゆくもないが、商売物の一つである髪を引っこ抜かれるのはまずい。
 俺は起きあがろうとする相手の動きを利用して、彼の肩から脱がしかけていたシャツを背中に引き下ろした。うまい具合に袖口が抜けないらしく、焦って自由になろうとする手首を背中で拘束したまま、もう一度力任せに突き飛ばす。
 彼の頭が枕に沈み、後ろに回された腕のせいで突き出すように逸らされた裸の胸は絶景だった。
「ヒューッ」
 思わず口笛を吹く。
 これが東洋人の肌なのか。黄色、と一言では言い表せない。アイボリーと乳白色の中間のような滑らかな肌は、肉食人種の生々しく赤らんだ肌とは違い、どちらかというと工芸品に近い手触りと光沢を持っている。無機質な印象さえある皮膚が呼吸と共に大きく上下し、わずかに色づいた乳首がその上にふたつ尖っているさまは、ストイックな印象もある分、かえって淫らだった。
「ちっちぇー乳首だなー」
 一生子供に吸われることのない乳首は、もちろんセックスで可愛がるためにある。針で突いたほどしかないその小さなとんがりを人差し指と親指でつまみ、すりつぶすように揉みこむと、再び強い悲鳴があがった。
「あ、痛かった?」
 顔を覗きこむと、潤んだ黒い瞳がこちらを睨みつける。
「×××! △○×△!」
 何か激しく怒っているようなのだが、痛い目に会わせたことなのか、手首を拘束していることなのか、どちらかだろう。もしかして見かけによらないが、主導権を握りたいタイプなのかもしれない。もしプロだとしたら客任せでことを進めるのはプライドに関わるのかも。
「まま、今日は俺にリードさせろよ。ロバートにはうんと誉めといてやるからさ」
 すると、再びロバートの友達がどうこうと喚き出す。
「はいはい、フレンド、フレンド」
 そう言って、俺は吸い寄せられるように可愛らしい乳首に唇を寄せた。
「ンンッ!」
 右手の親指で片方を弄りながら、舌全体を使ってもう一方をべろりと舐め上げる。味わうように、舐めとるように、何度もそれを繰り返していると、くすぐり程度にしか感じなかった突起が、わずかに膨らみ、弾力を持って舌先を押し返してきた。
 顔を離し、しげしげと自分の作業の結果を眺める。ぬらぬらと濡れたピンク色のそれは、強風に蹂躙された薔薇の花のように震えながら、色づいてそこに勃っていた。
 ピン、と爪先で弾くと、「アッ」と嬌声があがる。
 顔を上げると、大きな羽毛枕の中から必死で頭を持ち上げているヒロと目があった。半泣きの顔。目尻が赤くなって色っぽい。
「ヤメテ……」
 そんな声でノーと言われても、ゴーサインにしか聞こえない。
 俺はにっこりと笑うと、目を合わせたまま、右手をゆっくりと彼のパンツのジッパーにかけた。
「イヤ!」
 今度ははっきりとした拒絶だった。もちろんやめたりしない。
 俺は伸び上がって嘘吐きの唇に軽くキスを落とすと体を起こし、彼の下着ごと一気にズボンを引き下ろした。
 途中、慌てて抵抗するように膝を曲げたが、俺はなんなくそれを押さえて、脚の間に自分の体を割り入れた。
「××△! ※○!」
 跳ねあがる太腿を両手で押さえ、顔を近づけてじっくりお宝を拝見させてもらう。
「可愛いじゃん。ちょっと小振りだけど、綺麗なカタチだよな。ここが薄いのは東洋人だから?」
 もちろん答えなんてない。
 彼のペニスはわずかに勃起していた。
「もっとおっきくなる? なるよな? して見せて?」
 俺はそう言うと、震える砲身へ、ふうっと息を吹きかけた。
 下草がそよぎ、ぴくりと震えたそれは、またかすかに角度を上げたような気がした。だが、期待したほどではない。
 じれったくなった俺は、真っ赤な先端に誘われるように舌を伸ばした。
 ぎゃー、とか、わー、というような悲鳴が聞こえ、組み敷いた体が今までになく暴れ始めた。
 だが大人と子供ほどの体格の差があるのだ。
 俺は太腿に置いた両手に力をこめるだけで抵抗を押さえつけると、呑み込んだそれを、一気に舌の付け根まで導いた。
「ンーーーーーーッ」
 俺は別にフェラが好きというわけではない。やるよりはやってもらう方がいい。だが、ちょっぴり頭をもたげたヒロのそれは、いかにも「食べて」というようにこちらを見ていたのだ。喉近くまで入れたそれを数回唇でしごいてからいったん出してみたが、そのメッセージが間違いでなかったことがわかった。
 口腔に含まれていたせいでぬめりをまとったそれは、明らかに天を突いて喜んでいて、俺はすっかり嬉しくなった。
 今度は口の中に入れないで、側面を舌でたどる。視界にピンク色のペニスがいっぱいに広がり、活発に流れ始めた血液の音さえ聞こえるような気がした。
 俺は夢中だった。男のペニスを舐めるのにここまで没頭したことはない。
 遥か頭上ではウェイトとかストップが混じった言葉が壊れたレコードのように繰り返されていたが、それは俺を煽りこそすれ、抑制する力は持っていない。
 今まで、一番色っぽいのは、シャウトしすぎてかすれたアーティの声だと密かに思っていたが、まるで意味のわからないアジアの言葉がこんなに腰にクるものだとは思わなかった。
 両手が塞がっているせいで、つるりと逃げていくそれがうまく咥えられない。おまけに長髪が邪魔をする。まとわりつく自分の髪を、頭を振って可愛いペニスから引き剥がす。手を使わずにするのはなかなかの難行だ。だがそんな追いかけっこすら愉しみながら、俺はこちらが舐めずとも濡れ始めたそこを、舌先で強くえぐった。
 びく、びく、と手のひらの下で、肉の薄い太腿が痙攣する。そのリズムに合わせて、俺の股間もずきずきと声高に主張し始めていた。
 くそう、触りたい。触ってほしい。きつめの革のパンツだったのであらかじめ前はくつろげてあり、痛みにもだえる羽目にはならなかったが、それでも放っておくのは我が息子ながら可哀相だ。
 慣れた相手だったらこのままシックスナインに持ち込むところだが、何時の間にか喘ぎっぱなしの相手の表情に、あんまり期待しない方がいいかもしれない、と思った。半開きになった口は、下から見ても魅力的で、ペニスでなくても何かを突っ込みたくなるが、それはまたの機会にしよう。
 それよりはやっぱり早くイイところで出したい。
 俺はいったん彼をいかせてしまうことにして、再びそこを深く咥えこんだ。
 小さめとはいってもすでに育ちきっていて少々苦しかったが、上あごのでこぼこしたところに敏感な先端を擦りつけてやると、「アッ、んッ」というひときわ高い声が上がった。
 激しく頭を上下させながら、頬をすぼめて何度もペニスを出し入れする。濡れた卑猥な音が室内に響き、もう息も絶え絶え、といったヒロの吐息と共に俺の耳を楽しませた。
 不意に、彼が激しく身をよじり、何かを叫んだ。言葉の意味はわからなかったが、何が来るのかはわかった。
「アッアッアッ」
 再び暴れ始めた体を押さえつけ、先端を促すように強く吸う。
 彼はこちらを跳ね飛ばす勢いで体を横にし、背中を丸めるようにして絶頂を迎えた。
 俺は必死で吸いついていたので、彼の迸りを喉に受けることができた。
 別にそんなにまでして飲む必要はなかったのだが、気づいたときには青臭いそれを嚥下していた。飲ませた経験は数え切れなかったが、飲んだのは二回目だ。それも嬉々としてやったのは初めてだったかもしれない。
 俺は全てを飲み下した後で、丁寧に彼のペニスを舌で拭った。何だかもう、すごく楽しくて満足していた。
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